ランチタイムの王子様!

「な、なにかの間違いじゃありませんか?」

「ご夫婦になったばかり初々しいお二方をお部屋までご案内するようにと、さる御方から仰せつかっております」

「ふ、夫婦!?」

もしかして……。つぐみ姉と弘忠さん夫婦と間違われている?

だとすれば、さる御方というのはつぐみ姉に招待券をあげた人?

(……こんな話、聞いてないよ!!)

頭の中は突然の出来事に遭遇して混乱のあまり、グルグルと螺旋を描いている。

私と王子さんが夫婦で、スイートルームで、カードキーで……。

思考が限界に達した私はよろりとテーブルから立ちあがると、ギャルソンに詰め寄った。

「あの困ります!!私達は急用ができた姉夫婦の代わりに来ただけであって……。その……さる御方とやらにキーを返してください!!」

「申し訳ありません。わたくし共も、望月様にお渡しするようにと仰せつかっておりまして……」

ギャルソンは困ったように、通り一辺倒の返答しかしてくれなかった。要するにキーを返却してもらっては、レストラン側の不手際になるということだ。

ああ、これでは埒が明かない。

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