ランチタイムの王子様!

(そうか……帰るのか……)

一泊いくらなのか想像もしたくないほど素敵なスイートルーム。今日は残念なことに空気を温めるのね。

「あの……。本当に帰っちゃうんですか?」

「何か問題でも?」

私は小学生のように、もじもじしながら挙手した。

「王子さん、知ってますか?オリエンタルプラザホテルのモーニングセットは、世界一の朝食との呼び声も高いって」

「それが何か?」

「もしこのままスイートルームに泊まれば、そのモーニングセットが食べられちゃうんですよ!?」

そうなのだ。

オリエンタルプラザホテルの自慢といえば宿泊客しか食べられないという世界一とも称されるモーニングセットである。

日本国内から厳選された食材を集め、超一流のシェフの腕があればこその評判である。女性からの熱い支持は、テレビ番組で何度も特集が組まれるほど。

スイートルームに泊まれないことも惜しいが、憧れの贅沢の粋を集めた朝食メニューを食べられないのは更に残念なのである。

「呆れた……。あなたはエレベーターでそんなことを考えていたんですか?」

「そんなこととは失礼な!!王子さんは食べたくないんですか?だって世界一の朝食ですよ!?」

薄給のOLの立場で、易々と泊まれるほどオリエンタルプラザホテルは安くない。

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