ランチタイムの王子様!
「お、王子さんは……そんなことしませんよ」
「この世に絶対なんてありません」
「じゃあ、襲ってみせてくださいよ!!」
もし、私に対してそういう気になったらむしろ襲ってくださいって感じです。
私はどうぞと言わんばかりに仰向けになって、背後からベッドにダイブした。
据え膳食わぬは男の恥というのなら、ぜひ食べてください。ちょっと贅肉が多めですが、若いお肉は新鮮ですよ?
ベッドに寝転がったまま片目を開けて反応を窺うと、王子さんは完全に固まっていた。
そして、ヒクリとこめかみを動かすと、怖いくらい引き攣った笑みでこう言った。
「先にシャワーを浴びてきます……」
「ドウゾ……」
王子さんはしかめっ面でバスルームの中に消えていった。
(……勝った!!)
でも、正直に喜べない!!
要求は満たせたので試合には勝てたわけだが、王子さんをその気にさせる女性としての魅力が欠けていることが判明し、勝負に負けた気分になった。
王子さんがバスルームに籠りスイートルームに一人きりになると、世界一の朝食への熱も冷めてきて、急に頭が冷静になってきた。
とんだサプライズで酔いもすっかり醒めてきた。
(本当に同じベッドで寝るつもりなのかしら……?)
泊まると駄々をこねた手前、帰りたいとはもう言えない。
……どうしよう。今夜は眠れないかもしれない。