ランチタイムの王子様!

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翌日、メイクをするために早めに起きると、なんと隣で寝ているはずの王子さんが忽然と姿を消していた。

まさか、先に帰っちゃったの?

寝ぐせがついたままの髪を振り乱し寝室を飛び出てリビングルームに駆け込む。

しかし、ソファで身動ぎする物体を見た途端脱力してしまった。

(こっちで寝てるし……)

王子さんは足を肘置き部分に投げ出し、ソファ一杯にその逞しい体躯を埋めていた。

ははん。そうですか、そうですか。

確かにこの無駄にふかふかなソファなら、寝心地もさほど悪くないし?

つまり、最初からこのソファで寝る算段だったわけですね。

貧乳の私なんてはなっから襲う気なんてなかったと?

まったく!!それならそうと早く行って欲しかった。私のドキドキを返して欲しい。

無駄に狼狽えて、警戒して、ひとりだけバカみたいじゃないか。

私だって朝食が食べられるなら誰とだってホテルに泊まるわけじゃないですからね?

「王子さんのバーカ……!!この朴念仁!!根性なし!!」

「ん……」

女心をちっとも理解してくれない王子さんに八つ当たり気味に暴言を吐くと、呑気に目を瞑っていた彼が低く唸り寝返りを打った。

ああ、朝日が眩しい……。

(疲れた……)

早朝から盛大なひとり相撲を繰り広げ疲労困憊になった私は、昨夜はのんびり浸かれなかったバラ風呂で心を癒すことにしたのだった。

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