ランチタイムの王子様!
眉なしとからかわれた腹いせにこれでもかというくらいバッチリメイクをしてやって、余った時間で朝のニュースを見ていると、いつの間にか8時5分前になっていた。
スイートルームの重厚な扉は事前に連絡をしていた通りの時間、ピッタリにノックされた。
「ご朝食の準備をさせて頂きます」
ワゴンを運んできたウェイターは一礼をして、窓際のテーブルに真っ白なクロスを敷いた。
昨日は夜景が一望できたけれど、今朝は公園をジョギングしている老夫婦の様子がよく見える。
世界一とも言われる朝食はプロの手によって、次々テーブルにのせられていく。
お部屋で食べる朝食は初めてだった。友人と旅行で泊まるような観光ホテルでは宿泊は一緒くたになってバイキング形式というのが定番だ。
専用のウェイターに給仕してもらう朝食など、贅沢の極みである。
「おまたせいたしました」
テーブルの準備が出来たところで、席に案内される。ウェイターは軽く椅子を引くと、私が席に着くのに合わせて座席をそっと押した。
「いただきます……」
……もう、二度と食べられないかもしれない。
これが最後になってもいいように、しかとこの目に焼き付ける。