ランチタイムの王子様!
お局からのネチネチとしたイビリに耐えきれず前の会社を辞めた私にとって、この会社に転職できたこと――優しく頼もしい人達に囲まれた今の職場はまさに天国のようだった。
「ルージュランチっていうのはねえ……フィル・ルージュの名物なのよ!!」
教育担当である麻帆さんはフォークにパスタをくるくると巻きつけると、うふふと楽しげな笑みを浮かべて言った。
「名物ですか?」
名物と言われてもその実態がさっぱりわからないので、ポカーンと口を開けるしかない。
「まあ、詳しくは“王子”に聞いてよ。ルージュランチの仕切りは王子の仕事だから」
麻帆さんはあっさり説明を丸投げすると、パスタをパクリと口一杯に頬張った。
「“王子”さんですか……」
私はむむっと考え込むように、お行儀悪くフォークを咥えてしまった。
麻帆さんの手前、実はあの人が苦手なのですとは言えなかったのだ。