ランチタイムの王子様!

……朝霧さんは私のことを快く思っていない。

紙面では輝くばかりの笑顔を振りまいているのに、私に対しては明らかに“邪魔よ”とでも言いたげな冷笑を浮かべている。

私は急にこの場にいるのが恥ずかしく思えて、エプロンの裾をぎゅっと握りしめた。

「私……っ!!用事を思い出したので帰りますっ!!」

「望月さん?」

そう言ってリビングに戻りエプロンを外してバッグの中に突っ込むと、コートを引っ掴んで慌ただしく玄関から出ていく。

「待ってください!!」

「ごめんなさい、王子さん!!」

私は王子さんが引き留めるのも聞かずに、エレベーターを待つ間も惜しんで階段で一気に一階へと降り立った。

平気な顔で朝霧さんの隣に立てるほど美人じゃない。背が高いわけでもない。ファッションセンスだってあちらの方が上である。

“勘違いしないでください“

それは、誰に対して言った台詞だったのだろう?

私?それとも朝霧さん?

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