ランチタイムの王子様!

「ひばりちゃーん」

王子さんのマンションから帰る道すがら、胡桃坂商店街をトボトボ歩いていると菫さんに声を掛けられた。菫さんは私を見つけるのが本当に得意だ。

「ちょっと寄っていかない?冬限定の特別メニューがあるの!!」

お料理レッスンの日は出来上がった料理を食べて帰ることになっているので、そのままアパートに戻ったとしてもお腹を空かせて泣くだけである。

菫さんの言葉に従うように冬限定特別メニューとやらを注文し、お会計を済ませると、店頭にあった丸椅子に腰掛ける。

「土曜は瑛介に料理を教えてもらう日じゃなかったっけ?」

「王子さんに急な来客があったので、邪魔しちゃ悪いと思って帰ってきちゃいました」

テヘへとおどけるように言うと、菫さんは王子さんの元に訪れた来客に興味津々になった。

「あの子に来客?珍しいわねえ」

「……朝霧萌さんです」

「朝霧……?ああっ!!あの鶏がらに似ている子ねっ!!」

鶏がらっ……!!

菫さんらしい率直な物言いに、私はぷっと噴き出してしまった。

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