ランチタイムの王子様!

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ちっぽけな自尊心など捨ててしまえば楽になれるのにと、思ったのは一度や二度のことではない。

“すみません。今週の土曜も予定があります”

えいやっ!!と気合を入れてメールを送ると、15分ほどで返信がきた。

“わかりました”

王子さんのメールはいつもシンプルだ。必要な事柄を最小限の単語で表現してくる。

(また、断っちゃった……)

私はクッションと共にボスンとベッドに沈んだ。

……本当は予定などない。

お料理レッスンを断る理由が毎度毎度都合よく落ちているはずもなく、家でゴロゴロするのを予定だと言い張るのが、関の山である。

もう、何日も王子さんとまともに会話していないような気がする。

同じ会社とはいえ、担当が分かれているのだからそれが当たり前なんだけど、やっぱり寂しかった。

私は……恐れているのだ。

もし、二人の間に再び何かが始まるのなら、最初の目撃者にだけはなりたくなかった。

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