ランチタイムの王子様!

病院に寄って診察を受けると大方の予想通り風邪だと診断され、薬を処方される。

念のためインフルエンザかどうか検査してもらったけれど、結果は陰性だった。良かった良かった。ただの風邪なら2、3日もすれば治る。

「ひばりちゃーん!!今、帰りー?」

「ハイ……?」

熱でぼうっとなりながらも声のする方を向いて返事をすると、菫さんが私に手を振っていた。覚束ない足取りながら、アパートまでの道のりは覚えていたらしい。

「あら、顔が真っ赤じゃない!!どうしたの?」

「風邪を引いたみたいで……」

「大変!!何か届けようか?ひばりちゃん、一人暮らしでしょう?」

「いえ……大丈夫です。寝てれば治りますし、菫さんにはお店があるじゃないですか。風邪をうつしたら大変です……」

大丈夫と言った端からズビズビと鼻を啜ってしまったのは許して欲しい。

お昼を過ぎたこの時間帯に夕方のお惣菜の仕込みをしておかないと、お店が回らなくなるのを知っていた私はありがたーい申し出を慎んで辞退した。

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