ランチタイムの王子様!

「あんまりひどくなったら遠慮なくお店に電話するのよ?」

菫さんはそう言うと、お腹に貼るタイプのホッカイロを何枚かくれた。

「はーい……」

……体調の心配をされるなんて、まるで本物の親子みたいだ。

私は菫さんと別れると商店街にある薬局に寄ってマスクと体温計を買って、安息の地である我が家を目指し歩みを薦めたが、家に近づく度に咳がどんどんひどくなってくる。

まいった……。これは完全にこじらせている。

風邪の症状は明らかに悪化の一途を辿っていた。

(早く、寝よう……)

やっとの思いで家につくと怠い身体に鞭打ってパジャマに着替え、ベッドに入って目を瞑る。

平日のまだ明るい昼間の内に家にいると、窓の外から何やら賑やかな音がしてきて。部屋に一人だということを改めて実感する。

(ひとりって案外辛いな……)

実家を出て一人暮らしを始めてから半年以上経つわけだが、私は初めてしみじみと風邪なんて引くもんじゃないと思ったのだった。

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