ランチタイムの王子様!
「戻りました」
王子さんがコンビニから戻ってくると、動揺のあまり咄嗟に寝たふりをしてしまった。
だって、ここ数日避けまくっていたというのに今更どんな顔をすれば良いというのだ。
「寝ているんですか?」
再び呼びかけても反応がないとみるや、王子さんは買ってきたものを手際よく冷蔵庫に収納していった。
そして、シンクに置きっぱなしになっていた土鍋とお箸を洗うと、寝たふりを続行している私の枕元に寄ってそっと呟いた。
「帰ります。鍵はポストの中に入れておきますね」
(もう……帰っちゃうんだ……)
胸をつく寂しさは私をとんでもない行動に走らせた。
「望月さん?」
……嫌だ。どこにも行かないで。
そう叫ぶ代わりに私はぎゅっと王子さんのコートの裾を掴んで離そうとしなかったのだ。
朝霧さんの登場でムキになっていたのかもしれないし、具合が悪くて心が弱っていたのかもしれない。
けれど、今は……。もう少しだけ傍にいて欲しかった。
「起きているんですか?」
王子さんの長い指がサラリと私の髪を梳いていく。くすぐったさに身を捩ると、王子さんが観念したようにベッドに腰掛けた。
「仕方ありませんね」
王子さんは無言の我儘を優しい眼差しで受け入れると私が本当に寝てしまうまで、傍にいてくれたのだった。