ランチタイムの王子様!
ランチタイムと愛のレシピ
「あ、今日から出社したんですか?」
「はい」
王子さんの手厚い看病のおかげですっかり体調が回復した私は出社するなり喫煙所に向かった。
治ったばかりの身体には悪いが、王子さんとふたりっきりになるにはここしかない。
「色々とありがとうございました。これ、買って頂いたもののお金です」
そう言って、いくらかの現金が入った茶封筒を差し出す。
王子さんが帰った後、冷蔵庫には2、3日分の軽食とスポーツ飲料、食べやすいゼリーなどが詰まっていて切なくなった。
「気にしなくても良いですよ」
王子さんは煙草の火をもみ消すと、差し出された封筒を押し返した。お金を返してもらう気はサラサラないらしい。
「いえいえ、どうぞお受け取りください!!」
こういうことはきっちりしておかないと気が済まない性質なのだ。
受け取るように言い張る私に根負けしたのか、王子さんは最後には茶封筒を受け取ってくれたのだった。
「ところで、今週は来ますか?」
どこにとか、何をしにとか。余計な説明は省かれたが、私には何を意味しているか直ぐに分かった。
「あ、の……」
どうしよう……。言い訳を何も考えていなかった!!
どう答えるべきか悩んでいると王子さんは茶封筒でポンッと私の頭はたいた。
「……あなたが来ないと困るんですよ。せっかく買った食材が余って」
私は思わずはたかれた頭を擦った。
うわ、なにこれ!!すっごく照れ臭い!!
王子さん、私が来ると思って毎回準備してくれていたんだな……。
「今週は……行きます」
……もう、意地を張るのはやめよう。
確かに朝霧さんのことはもの凄く気になるけれど、私は料理を教えてくれようとしている王子さんに気持ちに応えたい。