ランチタイムの王子様!
「あら、瑛介は?」
戸口に立っていたのは王子さんではなく朝霧萌さんだったのだ。
タラリとこめかみから汗が噴き出てくる。
(タイミング悪すぎっ!!)
なぜ毎度毎度この人と出くわしてしまうのか、己の不運を嘆きたい。しかも、今日はよりにもよって王子さんがいないというのに。
「王子さんなら買い物に行きました。直ぐに戻ると思いますが……」
そう言うと、朝霧さんの艶やかな唇が綺麗な弧を描いた。
「ちょうど良かったわ。あなたに話しがあるの」
「……私ですか?」
疑うように自分を指差せば、朝霧さんはニッコリと笑いながら頷いた。
ほぼ初対面の私に何の話があるというのだろう。
王子さんの周りをウロチョロするなと忠告でもしたいのか。それならば、受けて立ってやろう。昔は彼女でも、今は他人だ。互いの立場は五分と五分。
そうやって身構えていたわけだか、朝霧さんの話は私が見当もしていなかった方向に舵が切られていく。
「瑛介のレシピノートのありか、あなたなら知っているんじゃない?」
「え?」
……レシピノート?
なんじゃそれと、首を傾げると朝霧さんが私の両肩をガシリと掴んだ。