ランチタイムの王子様!
「瑛介のレシピがあれば、私はもっとあの場所で活躍できるのよ!!お願い協力して!!ただとは言わないわ!!」
「いたっ……!!」
肩を掴まれる手に力が籠っていって、指がギリギリと食い込む。
朝霧さんの目はギラギラと血走っていた。相当切羽詰まっているのだろうか。
お金を払ってまでレシピノートを欲しがるなんてどうかしている。
料理家としての側面を持つ彼女の正体が……化けの皮が剥がれていく。
「レシピノートなんて知りませんよ……」
メニューの手順や食材の種類、調味料の配合に至るまで、これまで王子さんが何かを参照している気配はなかった。
「嘘言わないで!!レシピノートはあるはずよ!!」
知らないものは知らない。出せと言われたって出せるものでもない。
たとえ知っていたとしても、彼女に教える気はない。
「そんなに欲しいなら私に言わずに王子さんに聞いてください」
「聞いたにきまったでしょう?レシピノートを譲って欲しいって頼んだのに断られたのよ。だからあなたにお願いしているんじゃない」
ニコリと微笑まれても最早おぞましいものにしか思えなかった。
彼女は王子さんのレシピを自分が考えたものとして発表しようとしているのだ。