ランチタイムの王子様!
芸能界がどれだけ素晴らしいところなのかは知らないが、私を利用してレシピを盗んでまでしがみつきたいの?
王子さんのレシピはたゆまぬ努力と情熱を注いだ唯一無二の代物だ。
料理を心から愛する彼になんてことを頼むのだろう、この人は。
くだらない野心のために一度ならず二度までも王子さんを傷つけるなんて絶対に許せない。
「っ……てい……!!」
「は?」
「最低って言ったんです!!」
もう……我慢できない!!
「あなたは王子さんのグラタンがどれだけ美味しいか知らないでしょう!!」
大事に大事に作ったのに食べられなかったグラタン。
私にはグラタンを封印した王子さんの気持ちが痛いほど分かった。
王子さんがなぜ、私に料理を教える気になったのかようやく悟る。
……同じだったんだ。
大好きな人に喜んでもらいたくて作った料理を拒絶された悲しい気持ちを私達は知っている。
「あなたに王子さんのレシピを知る資格なんかないっ!!帰ってください!!」
両手を前に出して朝霧さんの身体を思い切り突き飛ばすと、彼女はふらりとよろめいて、マンションの床に尻餅をついた。
高そうなバッグが床に転がり、帰れと言われた朝霧さんの感情を逆なでする。