ランチタイムの王子様!
「……黙って聞いていればいい気になって!!」
振り上げられた掌は真っ直ぐ私の頬に狙っていた。
(ぶたれるっ!!)
そう覚悟をして目を瞑ったのに、いつまで待っても頬を叩かれる気配はなかった。
「……はい、ストップ」
朝霧さんが振り上げた右手の手首を背後から掴んでいたのは、スーパーの買い物袋を持った王子さんだった。
「萌、いい加減にしてください。レシピノートの件はきっぱり断ったでしょう?」
「っ……!!」
王子さんはそう言うと、かなり冷ややかに朝霧さんを見下ろした。
「金輪際、私の周りに近づかないでください。今のあなたは赤の他人以外のなにものでもありません」
かつて彼女だった人に対してこれほどまでに怒れるのかと恐ろしくなる。
朝霧さんは赤の他人宣言を聞くと顔を真っ赤にして手を振りほどき、床に転がったバッグをむんずと掴んで盛大な捨て台詞を吐いた。
「もういい!!瑛介には頼まないわ!!」