ランチタイムの王子様!
遠慮して断ろうとしている気配を感じたのか、王子さんがダメ押しのようにそっと私の頭を撫でた。
「私が封印していたグラタンを作ろうという気になったのは……あなたならきっと、残さず食べてくれると思ったからです」
王子さんはそう言うと照れたように口元を手で覆いながらそそくさとキッチンに逃げ込んでしまったのだった。
(王子さん……?)
「だから、もらってください。あなたがもらってくれないと処分に困るんです」
感情をあまり表に出さない王子さんが、言い訳がましく大事にしていたレシピノートを私に与えようとしてくれている。
「ありがとうございます!!大事にしますね!!」
私は嬉しくて飛び上がりそうな気持ちをなんとか抑え、王子さんにお礼を言った。
「さあ、オリーブオイルも買ってきましたし、そろそろ始めましょうか?」
「はいっ!!」
私はエプロンを身に着けると、王子さんの隣に並んで野菜を冷蔵庫から取り出し始めた。
願わくば……。
このレシピノートが歩んできた時間と同じくらい王子さんと一緒の時を過ごせますように。