ランチタイムの王子様!

己の無力さを嘆くように盛大なため息をついていると、王子さんはレターボックスからあるチラシを持ってきて私の目の前に掲げてみせた。

「望月さん、新しく出来た惣菜店には行ったことがありますか?」

王子さんが持ってきたのは件の新しい惣菜店の折込チラシだった。菫さんに言われて私も部屋の中を探したのだが、見当たらなかったのだ。きっとゴミと一緒に捨ててしまったのだろう。

「それがはまだ行ったことないんですよねー」

そう言ってチラシを受け取ると、隅から隅までじっくりと眺める。

“ビストロ華”

その店名の通り、お花をモチーフとしたチラシは薄いピンク色をしていて大変可愛らしかった。

アパートとは反対方向だし、キッチンすみれでご飯を買ってしまえばわざわざ他のお店にも寄って帰ろうという気にならないので、私はまだビストロ華の外観すら拝んだことがなかったのだ。

「実は私も行ったことがないんです。よろしければこれから偵察を兼ねて行ってみませんか?」

「行きます!!」

時刻は丁度お昼時、お腹が空く頃合いだ。私は王子さんの提案にもろ手を挙げて喜んだのだった。

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