ランチタイムの王子様!
ビストロ華から王子さんのマンションに戻ると、買ってきた商品をダイニングテーブルに並べ試食を開始する。
「いただきます!!」
腹ペコだった私はライバル店のお弁当ということもすっかり忘れ、鼻歌交じりにパクパクとお弁当を口に運んでいった。
「美味しい!!」
私が食べているのはビストロ華特製の健康弁当だ。
健康弁当は雑穀米のご飯に、野菜や低カロリーの食材を使ったおかずを詰めたダイエットを目的としたお弁当だった。
炒める、揚げるなどの調理法を避け、蒸したり、オーブンで焼くなどして油をなるべく使わないように工夫がされている。お腹いっぱい食べても500キロカロリー以下なのは、かなり嬉しい。
「こっちもなかなかの味です」
王子さんが食べているのはオーソドックスな幕の内弁当である。健康弁当よりおかずの種類が豊富で、こんがり焼いた鮭と大きなエビフライが特徴だ。
(王子さんが褒めるなんて……)
どうやら、ビストロ華は敵ながら天晴なやつだった。
王子さんは静かに箸を置くと、物々しく口を開いた。
「すみれの売上が落ちたのも納得しました。開店したての店が物珍しいだけで、その内こちらに客足が戻ると踏んでいたのですが、甘かったようです」
王子さんの表情はいつになく真剣で、私は自分の役割がどれだけ重要なのか思い知った。
(新メニューの開発、頑張らなくっちゃ……!!)