ランチタイムの王子様!

「うわっ!!もうこんな時間!!」

時計を見ると既に20時を過ぎていた。

襲いくる眠気と闘いながらのラッピング作業は随分と時間を浪費してしまっていたようだ。

慌ててラッピングの終わったノベルティをダンボールに入れて倉庫に運ぶ。

今夜中に美味しいハンバーグの作り方に開眼しないと、明日のルージュランチに間に合わなくなる。

(早く帰ってスーパーに寄らないと!!)

倉庫から駆け足でオフィスに戻ると皆さん同じことを考えていたのか、残業しているのは王子さんだけだった。

デスクライトとパソコンのディスプレイが王子さんの横顔を淡く照らし出している。

「まだ残っていたんですか?」

王子さんは私がオフィスに入ってきたことに気がつくとキーボードを打つ手をとめて、眼鏡のフレームを軽く押し上げながら言った。

「はい……。ノベルティのラッピングに手間取りまして……」

会話を早めに切り上げバッグを抱えていそいそと帰ろうとすると、王子さんに再び声を掛けられる。

「いよいよ明日ですね」

……明日が何の日なのか、尋ね返すようなことはあえてしない。

「頑張ってくださいね」

王子さんからの激励の言葉を、深々とした会釈で返す。

「お先に失礼します」

扉を閉めて廊下に出ると、早足でエレベーターを目指す。王子さんに励まされるなんて変な感じだ。

(そういえば、王子さんは何を作るつもりなんだろう?)

私はルージュランチの話を聞いてから、王子さんがどういう料理を作るのか初めて気になったのだった。

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