ランチタイムの王子様!
王子さんと連れだって歩くと、この古ぼけた胡桃坂商店街もなんとなく新鮮に見えてくる。
「菫さん、どんな反応しますかねー」
「さあ……。あの人はいつも私の予想の範疇外にいるので」
「あはは!!喜んでもらえるといいですね!!」
憎まれ口叩いていたって王子さんが菫さんとキッチンすみれを大事に想っていることはバレバレだ。そうでなければ、新メニューの開発など手伝ったりしない。
そうやってたわいのない話をしていると、まもなくキッチンすみれの店頭が見えてくる。
商店街の店の多くが19時に店じまいを始める中、キッチンすみれには煌々と明かりが灯っていた。
閉店間際の店頭には既にお客さんの姿はなく、そろそろ店じまいを始める頃合いだというのに菫さんの姿もどこにも見えない。
「菫さーん?いないんですか?」
厨房に向かって呼びかけてみても返事がない。
お店を開けっ放しでどこかに行ってしまったのだろうか。
不審に思っていると王子さんはおもむろにカウンター脇の小扉を潜って厨房へと足を踏み入れた。
「王子さん!?」
とっさの行動の意味が分からず王子さんに習って小扉を潜って追いかけると、そこには顔面蒼白で床に蹲って倒れている菫さんがいたのだった。