ランチタイムの王子様!
「菫さん!!しっかりしてください!!」
私は菫さんに駆け寄ると、半狂乱になって必死になって菫さんの名前を呼んだ。
(どうしてこんなことに!!)
もっと早くキッチンすみれに着いていればと、悔やんでいる暇はない。
「ひ……ば……りちゃ……」
何度も呼びかけていると、菫さんが薄らと瞼を開けてくれた。辛うじて意識があることに、少なからずホッとする。
「今、救急車を呼びます!!」
私は厨房の中をあちこち見回し、お店に備え付けられている固定電話を探した。一刻もはやく救急車を呼ばなければならないのに、気持ちが焦っているせいで電話が見つからない。
こんな時、誰よりも頼りになるはずの王子さんはなす術なく茫然自失で厨房に突っ立ている。
「王子さん!!救急車!!」
「あ……っ……」
「早く!!」
そうやって激しく怒鳴りつけると、ようやく自分の置かれた状況を正しく理解し、棚に置いてあったコードレスフォンを手に取った。
王子さんの119番通報にしたがって救急車が到着したのは5分後のことだった。
菫さんは担架に載せられ、救急車で病院に運ばれていった。
(どうか無事で……)
救急車を見送ることしか出来ない私は、菫さんの無事をひたすら祈るのだった。