ランチタイムの王子様!
会社から急いで帰宅すると、既に時刻は夜の9時近くになっていた。
駅前のスーパーはちょうど閉店間際のタイムセール中であった。タイムセールを狙ってやってくるお客さんで店内はなかなか混んでいる。
(間に合ったー!!)
店内に入るやいなや激安のお惣菜、おつとめ価格の野菜といったお得な商品には目もくれず、精肉コーナーに直行する。
……しかし、そこには予想もしない光景が広がっていた。
「嘘でしょ!!」
精肉コーナーで私が見たものとは、空っぽになった陳列ケースであった。
陳列ケースに手をついて、どこかにひき肉が隠れていないかあちこち見回しても、ひき肉はおろか他のお肉もない。
(どうしよう……)
途方に暮れて、その場に崩れ落ちてしまう。
ひき肉がなければ当然、ハンバーグは作れない。ハンバーグが作れないということは、明日のルージュランチは絶望的である。
私は近くを歩いていた店員さんを捕まえて、ひき肉が本当にないのか尋ねてみた。
「すいませんねえ。夕方のセールで全部売り切っちゃったんですよ」
「そんなあ……」
気落ちしている私を哀れに思ったのか店員さんが気を遣って、他にもスーパーを教えてくれたが、不運なことにどの店舗もひき肉は売り切れとなっていた。