ランチタイムの王子様!

(寒い……)

面会時間が終わり病院から出ると気温がグッと下がっていて、あまりの寒さにコートの襟を引き寄せる。

先ほど聞いた菫さんの話が尾を引くように、家路を辿る足取りが重かった。

キッチンすみれは臨時休業のため、夕飯をどこかで調達しなければならないのに、なんだか食欲まで失せてしまったようだ。

(王子さんは本当に大丈夫なのかしら……)

結婚する時に縁を切ってしまったせいで、王子さんにはいざという時に頼れる親戚も相談できる兄弟だっていない。

父親の死に際を目撃し、母親もまた同じように倒れたとあっては、とても心穏やかではいられないだろう。

(王子さん……)

王子さんのことを考えると胸がきゅうっと苦しくなった。

……この気持ちは決して同情なんかじゃない。

私は心の声に耳を澄ませると、自分の思う通りに行動しようと決意したのだった。

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