ランチタイムの王子様!
「王子さん」
喫煙所にいる王子さんは、最低気温5度の真冬だというのにコートも羽織らず今にも風邪をひきそうなほど薄着だった。
それほどまでに、煙草が吸いたいか。このニコチン中毒者め。
「今日も病院に行かれるんですか?」
「ええ。午後から」
王子さんは燻らせていた煙草を灰皿に押し付けると、階段の踊り場から一歩また一歩と私の元へと階段を上ってくる。
「見舞いにきてくれたそうですね。母が喜んでいました。DVDの続きがあったらぜひ借りてきて欲しいそうです」
「はい、わかりました。明日にでも持って行きますね」
退屈な入院生活の息抜きにでもなればと選んだのだが、どうやら予想以上に喜んでもらえたようだ。
「あの……他に私に何かできることはありませんか?」
「気持ちだけありがたくもらっておきますよ」
意を決っして言ったつもりなのに、王子さんは社交辞令と受け取ったようだ。よしよしと私の頭を撫で、そのまま非常階段から去っていこうとする背中を追いかけると、嫌々をするようにシャツをわしっと掴む。