ランチタイムの王子様!
「あの……無理しないでください。私、王子さんが心配なんです!!」
王子さんは真面目で、冷静で、格好良くって、その上料理も上手で……カッコ悪いところばかり見せている私とは対照的に隙がなさ過ぎてズルい。
でも、それは長所であると同時に短所でもあるのだ。弱みを見せられないということは、誰にも本当の自分を明かせないということだから。
「こ、こう見えても掃除は得意なんです。それに、靴磨きだってできます。だから……」
……なんでも良いから王子さんの役に立ちたい。
だって……、私……!!
「望月さん」
掴んでいたシャツが手から離れ王子さんの身体がクルリと反転したかと思うと、私はあっという間に頭を彼の逞しい胸板に押しつけられていた。
「少しの間だけ……こうしていても良いですか?」
……それは突然の抱擁だった。
(ダメなんて……言う訳ないじゃないですか……)
私は返事をする代わりにメイクが王子さんのシャツにつかないように注意しながらその胸に顔を埋め、おそるおそる背中に手を回した。
寒さに震える身体もこうしていれば温かい。
ずっと、こうやって抱きしめられてみたかった。ううん、私の方こそ抱きしめてみたかったのだ。
……もし、許されるならばこの先もあなたの傍に寄り添っていても良いですか?
どうか夢なら覚めないようにと強く願いながら、私は王子さんに身を委ねたのだった。