ランチタイムの王子様!

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「続き、借りてきましたよ」

「ありがとう、ひばりちゃん」

王子さんに宣言した通り、DVDの続きを借りて菫さんの病室に持って行くと大層喜ばれた。病院というのはよほど退屈らしい。菫さんのように一日中忙しく働いている人ほど、その反動で暇な時間を持て余してしまうのだろう。

DVDの他にも何か暇を潰せるものはないだろうかと考えると、名案が浮かんだ。

「あ、そーだ。新メニューのレシピを見てもらっても良いですか?試作品は後日王子さんに頼んで作ってもらうとして、菫さんの意見も聞きたくて……」

私は王子さんからもらったレシピノートをバッグから取り出した。

嬉々として説明を開始しようとした私を菫さんが戸惑いの瞳で見つめ返してくる。

「ひばりちゃん、瑛介から何も聞いてないの?」

「何のことですか?」

新メニューのレシピの話?もしかして、お味噌汁は平凡すぎるってもうダメ出しされちゃったのかな?

しかし、菫さんが次に発したのは私の予想のどちらでもなかった。

「瑛介がね、キッチンすみれを畳もうって言っているの」

「……え?」

私は思わずレシピノートを取り落としてしまった。

菫さんの言っていることを信じる気になど到底なれない。

「あの子、やっぱり今回のことが相当堪えていたみたい。私もね、店のことに関しては瑛介の意思を尊重しようと思って。ごめんね、ひばりちゃんに頼んでいたこと、全部無駄にしちゃって……」

菫さんは私が落としたレシピノートを拾うと、今度こそ落とさないようにしっかり手に握らせた。

……一生懸命考えたレシピだった。

王子さんと毎日お味噌汁ばかり食べて、塩分過多で死んじゃうって冗談も言って、それでも最後までやり遂げて……。

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