ランチタイムの王子様!
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お昼を買いにエレベーターに乗って扉が閉まるのを待っていると、駆け込んでくる人影が見えたので、気を利かせて開ボタンを押す。

「すいません、ありがとうございました」

「あ、王子さ……」

エレベーターの中に気まずい沈黙が流れたのは言うまでもない。どんよりとした空気をのせてエレベーターは動き出す。

ふたりきりになったのはキッチンすみれで言い争いをして以来だった。

王子さんはこれからまた病院に行くのだろう。容体も安定してきたので、そろそろ退院の日取りも決まりそうだと菫さんが嬉しそうに話していた。

「本当に50人前の弁当をひとりで作るつもりですか?」

「はい」

王子さんにどう思われようと、私は私の意地を突き通すまでだ。

キッチンすみれは絶対に閉店させない。

「そうですか」

王子さんはそう言うと、1階に到着したエレベーターから足早に出て行った。

……もう、目も合わせてくれない。

毎週、料理を教えてくれていた日々が嘘みたいによそよそしい。

それでも私は……彼の大事なものを守りたかった。

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