ランチタイムの王子様!
「毎度あり。菫ちゃんによろしくな」
源さんが帽子を取って頭を下げると、ごま塩頭が露わになった。
商店街の皆さんとすみれさんの付き合いは相当深いらしく、源さんとも30年来の付き合いがあるそうだ。
「ありがとうございます」
食材の入ったダンボールを受け取ると、よろめきながら厨房の作業台まで運ぶ。
(あ、ホントにおまけしてくれたんだ……)
頼んだ覚えのない野菜まで、ダンボールに入っていてある種の感動まで覚えてしまう。
ひとつことを長く続けることの難しさ、そしてその恩恵にあずかった幸運を胸に、ピーマンを切っていく。
今日のお弁当のメインはピーマンと細切り筍のチンジャオロースだ。
ピーマンを切り始めてまもなく精肉店の次郎さんもやって来て、発注した食材がすべて届いた。
……お弁当作りが順調だったのはここまでの話である。