ランチタイムの王子様!
(もうこんな時間!?)
大量のピーマンを切るのに手こずり、気がつけば大分時間をロスしていた。
これまではさほどスピードを要求されてこなかったので、時間配分が甘かったことは否めない。
私はピーマンでの遅れを他の食材で取り戻そうと躍起になったが、事態はそう上手く行くはずがない。急ぐが丁寧に。これがまた難しく作業の遅れは縮まるどころか広がるばかり。
しかし、問題はそれだけではなかった。
(な、なにこれ!?重い!!)
初めて使う中華鍋に手首を持って行かれそうになって、慌ててコンロに戻す。
フライパンとは違う重量感に慣れていないせいか、上手く振ることが出来ない。
折角切った食材は鍋から零れ、コンロの火で焦げていく。
(どうする?フライパンを使う?)
厨房にはフライパンもあるが、50人前を作るとなるとやはり効率が悪い。約束の時間に間に合わないかもしれない。
……考えろ。
弱音を吐いたって、今日は助けてくれる人はいない。自分で考えるしかないんだ。こうしている間にも時間は過ぎていく。カチカチと鳴る時計の針が余計に心を焦らせる。