ランチタイムの王子様!

視界の端で鍋が噴きこぼれているのが見える。

火を消さなきゃと思うのに、頭がぼうっとして何も考えられらない。

火を消して、それから洗いものをして……。

副菜の準備は何から始めるんだっけ?

あ、れ……?

私は何をしたらいいの?

急に頭が真っ白になってしまい、恐怖で足が竦んでその場から一歩も動けなくなってしまう。

そんな時、王子さんの声がどこかから聞こえたような気がした。

“大丈夫、落ち着いてください”

「……っ……!!」

それは、料理レッスン中に繰り返し言われている台詞だった。

頭の中が一杯一杯になると思考がフリーズする私に、王子さんはいつも落ち着けと静かに語り掛けてくれた。

……私は目を覚ますために己の両頬をパシンと掌で叩いた。

もう少しだけ頑張ってみよう。

一番弟子がこんな体たらくではお師匠様に顔向けできない。

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