ランチタイムの王子様!

「あら……。こんばんは、ひばりちゃん!!」

「菫さん……?」

ぼうっとしている間にどうやらキッチンすみれの前までやって来ていたらしい。

店じまいをしていた菫さんは私を発見するなり近くに寄ってきて、こそっと耳打ちをする。

「あれからどう?お料理は上手く行っているの?」

菫さんのニコニコとした表情を見ていると、自分のダメっぷりが心底情けなくなって思わず弱音を吐いてしまう。

「ちっとも上手に出来ないんですっ……!!」

「え?ひばりちゃん!?」

一度零れてしまった涙は元には戻らない。私はオロオロとうろたえる菫さんに涙ながらに自分の窮状を訴えていた。

「玉ねぎはみじん切りにできないし、お肉を焼いてもコゲコゲで変な形になっちゃうし、ひき肉だってスーパーに売ってなくて……っ……!!私……このままじゃ……」

……あの時と同じだ。

かつて経験した苦い記憶が蘇ってきて息が苦しくなる。

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