ランチタイムの王子様!

……王子さんが加わったことにより、お弁当作りは一気に加速した。

「望月さん、弁当のパックを用意してください」

「はいっ!!」

王子さんは一心不乱で重たい中華鍋を振るっている。

言われた通り弁当のパックを作業台に並べると、出来上がったチンジャオロースを王子さんはお玉で1人前ずつ取り分けていった。

ご飯を盛り付けて、ゴマをふりかけて小梅をのせる。副菜は酸味の効いた春雨サラダだ。そこに漬物と出来合いの卵焼きを添えれば、キッチンすみれ特製のチンジャオロース弁当の完成である。

きっちり50人前仕上げると、5人前ずつビニール袋に入れてミニバンに積みこむ。

「急いで!!」

王子さんに急かされるように助手席に乗り込んでシートベルトを締めると、運転席のデジタル時計は既に11時を回っていた。

「近道しますから、しっかり掴まっていてくださいね」

王子さんはそう言うと、これでもかとアクセルを踏み込んだ。私は急発進した反動で助手席に背中を打ち付けてしまった。

……本当に荒い運転だった。

交通ルールをギリギリ守っていたものの、はっきり言って生きた心地がしなかった。

しかし、そのおかげで約束の11時半には約束通りお弁当を河原に持って行くことが出来たのだった。

< 260 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop