ランチタイムの王子様!
「明日、もう一度母と話をしようと思います。店を畳まなくても、母の負担を減らせる方法がないか考えてみます」
王子さんはコートについた土を払うと、すっと私に手を差し伸べた。
「帰りましょうか?」
「はい!!」
差し出された手を握ると王子さんが力強く腕を引いて、私を芝生の上に立たせた。
目線が近くなったところで、ふっと目が細められる。
「望月さん、明日私のマンションまで来てもらえませんか?」
「それは構いませんが……」
「あなたに料理を教えるのは明日で最後にします。だから、必ず来てくださいね」
王子さんはそう言うと、颯爽とミニバンの運転席に身体を滑り込ませた。
(最後……?)
突然の終了宣言に私は困惑するばかりだった。
王子さんと私を繋いでいたのは、毎週土曜日の料理レッスンだった。
会社では見られない王子さんの素顔を知ることが出来たのも、あの時間があったおかげだ。
(私が好きって言ったから……?)
好意を持たれるのは迷惑ってことですか?