ランチタイムの王子様!
「待っていましたよ」
王子さんは玄関の扉を開くと頬をやや上気させながら言った。
これから振られる相手に待たれるというのも奇妙な気分である。
「あ、えと……。お邪魔します……」
玄関に上がってスリッパを履くだけなのに、どことなくぎこちない動作になる。王子さんが上機嫌だから、なおさらだ。
出来の悪い生徒を破門にする理由を見つけて、清々しているからとか……?
……ダメだ。思考が暗い。暗すぎる。
ため息をつきながらコートとマフラーを脱ぎ、ハンガーにかける。
いつものように持参したエプロンを身に着けようとすると、王子さんがダイニングテーブルの椅子を恭しく引いた。
「今日はここに座ってください」
「最後のレッスンですよね?」
「ええ、そうですよ」
最後のレッスンなのに料理を作らないの?
ダイニングテーブルには一人分のカトラリーとナプキンが綺麗にセットされていて、それが誰のために用意されたものなのかは直ぐに分かった。
これは、もしかして、ひょっとすると……。
ドキドキと高鳴る胸を押さえながら椅子に座り、ナプキンを膝の上に置いて大人しく待つ。