ランチタイムの王子様!
「まずは前菜からです」
作るのももちろん、給仕も王子さんの役目だ。
彼は本物のギャルソンのように洗練された動作で前菜を盛り付けた皿をテーブルに置いた。
「うわあ、美味しそう!!」
私は掌を窄めて、小さな拍手をシェフに贈った。
エビとジャガイモのカクテルサラダは期待を裏切らない味だった。爽やかなバジルソースのおかげか、ぼそぼそとしたジャガイモの食感を忘れてぺろりと平らげてしまった。
「これくらいで喜ぶなんて早いですよ」
サラダ、スープとフルコースはまだまだ続いていく。
抜け目のない王子さんはちゃんとシャンパンも用意していて、ソムリエの真似事までしてくれた。
いや、私が知らないだけでソムリエの資格も持っているのかもしれない。恐るべし、王子さん。
「魚料理は舌平目のムース仕立て、バターソースです」
「口直しにミントのソルベをどうぞ」
「メイン料理は鴨肉のコンフィです。鴨肉は平気ですよね?」
次々と出される料理の数々と王子さんの料理に魅せられて、ぽうっと頭が麻痺してくる。
この気持ちを何かに例えるならば……。
夜明け前、布団の中で夢と現実の境を行き来している時のような、温かいお風呂に身体の芯から浸かっている時のような、幸せな気持ち。