ランチタイムの王子様!

「最後はデザートですね」

私はあっと大きな声で叫ぶと、はしたなくテーブルから身を乗り出してしまった。

「パンケーキだ!!」

「厳密にはデザートとは言えませんが、残念ながら私が作れそうな甘い物はこれくらいしかありませんでした」

「嬉しいです!!」

変化球なしのオーソドックスなパンケーキにメープルシロップをたっぷりかけて頂くと、バターの濃厚な香りが口いっぱいに広がる。

……美味しい。

美味しくてたまらないのに何故か寂しさで心が埋め尽くされる。

なんか、もう……。色々我慢していたのにダメだ……。

「私、嬉しいです。王子さんの作ったフルコースが食べられて……」

王子さんへの想いが次々と溢れて、涙が頬を伝っていく。

最後のレッスンに相応しい、それは素晴らしい授業だった。

きっと、最高の思い出になるだろう。

でも……。

「最後なんて……嫌です……」

王子さんと過ごした数ヵ月、本当に楽しかった。

包丁の使い方も、野菜の下拵えの仕方も、計量スプーンの使い方も。

……恋だって。

大切なことは全部王子さんが教えてくれた。

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