ランチタイムの王子様!
王子さんは床に膝をつくと、涙で濡れた私の頬を指で拭ってくれた。
これ以上、優しくしないで欲しい。お別れがより一層辛いものになってしまうから。
「望月さん、聞いてください」
「嫌っ!!聞きたくない!!」
嫌々と駄々をこねて耳を塞ぐ。だって、聞いたら終わってしまう。ふたりで過ごした日々が何の意味もないものになってしまう。
「聞きなさい!!」
王子さんは厳しい口調で言うと私の頬を手で包み、これ以上何も言えないように唇を強引に塞いだ。
「お、うじさ……」
「黙って」
王子さんはそう言うと、トレードマークだった眼鏡を外しテーブルに置いた。
抵抗がないとみるや、口づけはより濃厚なものに変わっていく。
……身体が芯から蕩けてしまいそうだった。
何度も何度も角度を変えられ夢中で応えていると、呻き声も小さなため息さえ掠め取られていった。
情熱的なキスに骨抜きにされ、すっかり大人しくなった私に王子さんがそっと囁く。
「私の料理を食べて屈託なく笑うあなたに魅かれていましたよ。最初からね」
それを聞いて、私はまた泣き出してしまった。今度は嬉し泣きだ。今までなんて遠回りをしていたのだろう。