ランチタイムの王子様!
「私が作ったものがやがてあなたの血となり肉となる。身体の内側から自分の物だって主張される気分はどうですか?」
か、身体の内側からって……。
もしかして、お手製フルコースにはそういう意味があったの?
「王子さんって……ちょっと変態入ってませんか?」
「まあ、つまりはそういうことです。残念な男なんですよ、私は」
私は王子さんの首に手を回すと、ぎゅうっとしがみついた。
……変態でもいい。事あるごとに王子さんのご飯を食べてきた私の身体はもうそれなしでは生きていけない。
「責任取ってください。王子さんのご飯じゃないと満足できない身体にしたんですから!!」
「望月さん、目を瞑ってください」
……甘いものを作るのは苦手なんて嘘だ。彼のくれるキスは砂糖菓子のようにひたすら甘い。
「あなたを今すぐ食べてしまいたい」
王子さんらしからぬ甘い台詞に、かあっと耳まで真っ赤に染まる。
なんかキャラが違う!!どうしちゃったの!?本物の王子様みたい……!!
あうあうと口をわななかせていると、王子さんはやや迫力のある笑みを浮かべて言うのだった。
「三十路男を本気にさせた罪は重いですよ?」
私は心の中で白旗を揚げると、覚悟を決めた。どうせ、こうと決めた王子さんには敵わない。
「す、好き嫌いは許しませんから……」
「ええ、望むところです」
一流の料理人にとって肝心なのは食材の下拵え。
借りてきた猫のように大人しくなった私は王子さんの思うがまま、まな板……もといベッドの上に転がされ、美味しく調理されてしまったのでした。