ランチタイムの王子様!
(ほほう……。どれどれ?)
まるで評論家にでもなったような気持ちで、皿の上のテリーヌをじいっと観察する。
色の綺麗な野菜を使用しているおかげで、切り口が目に鮮やかだ。細部にまでこだわった仕上がりには素直に好感が持て、否応がなしに味への期待が高まる。テリーヌをお箸で割ると、そっと口に運ぶ。
「美味しい……」
テリーヌ特有のしっとりとした味わいと、野菜本来の甘みとほどよくマッチしていて、本当に驚くほど美味しい。
お店で食べるものと遜色ないテリーヌを作れるなんて……。
「これ、麻帆さんが作ったんですか?」
「違う、違う!!私のはこっちだよ?あ、食べる?」
結婚2年目、そろそろレパートリーが尽きてきたとぼやいた麻帆さんが作ったのは、旦那様が好きだというちくわの磯部揚げだった。お言葉に甘えてありがたく頂戴すると、こちらも中々の美味であった。
もぐもぐと磯部揚げを咀嚼していると、麻帆さんがとんでもない爆弾を投下してきた。
「このテリーヌは王子が作ってきたのよ。本当に悔しいくらい美味しいよね……」
私は衝撃のあまり、ぶほっと食べたものを吹き出してしまいそうになった。
(お、王子さん!?)
テリーヌののった皿と麻帆さんの顔の間を、何度も首を上下させ往復する。
信じられない!!