ランチタイムの王子様!

「ところで、望月さんの作ったやつはどれ?」

腕組みをして考え込んでいる最中に、麻帆さんが目をキラキラとさせて尋ねてきたので、動揺してギクンと肩を揺らしてしまった。

平常心。ここは平常心で切り抜けるのよ!!ひばり!!

「あの、赤い蓋のタッパーです……」

「あれ?もうなくなりそうじゃん!!凄い人気だね!!」

麻帆さんの言ったとおり、指差した先には男性社員が何人か輪を作っていてタッパーの中のからあげを奪い合っている様子が見て取れた。

……からあげはいつの間にか、なくなりかけている。

嘘をついているという罪悪感が無くなるわけではないが、ズルをした証であるからあげが目の前からなくなっていくとやはりホッとする。

「なくなる前にもらってくるね!!」

そう言うと麻帆さんは男性社員の輪に混ざりに行ってしまった。

ひとり取り残された私は手持無沙汰になって、沢山の料理が並んでいるテーブルをぼうっと眺め始めた。

あれほどお腹が空いていたのに、今は何も食べられそうにない。

皆さん、今日という日のためにどれだけの時間を費やしたのだろう。

出来ることなら胸を張ってこの場に立っていたかった……。

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