ランチタイムの王子様!
「ボケっとしている暇はありませんよ。早く手を洗って手伝ってください。お昼までに老人会のゲートボール大会の会場に50人前の弁当を届けないといけなんですから」
「え!?」
50人前!?お弁当!?なにそれ!?
「着替えてきてください」
「は、はいっ……!!」
王子さんがポイっと投げてよこしたのは菫さんがいつも身に着けているカーキ色のエプロンと三角巾だ。
王子さんは既に同じものを着用しており、シャツの袖口を肘までまくると、早速食材の下ごしらえに取り掛かっていた。
(はやっ!!)
私がもたもたとエプロンを身に着けている間に、王子さんはキャベツを瞬く間に千切りにしていく。
早すぎて包丁が見えないですよ……王子さん。
キャベツの千切りを目の高さまでつまみ上げて細さを確認している様子は王子というよりか、ある種の職人に近い。
……あれだ。これはギャップで萌えられる範囲を超えている。
「ひばりちゃんはこっちを手伝ってもらえる?」
手招きされて菫さんの元に小走りで行くと、炊きたてのご飯がお釜の中でもあもあと湯気を立てていた。