ランチタイムの王子様!

それからは本当に余分なお喋りをしている間もないほど忙しかった。

私は菫さんの指示通りに漬物やサラダといった副菜を盛り付け、王子さんはメイン料理の“豆腐入りヘルシーつくねの甘辛だれ”(美味しそう)を仕上げていった。

朝から働きづめで約4時間。お弁当50人前を作り終えると、身体はクタクタになっていた。

「じゃあ、配達してくるわね!!」

キッチンすみれの店名がデカデカと刻印されたミニバンに乗り込んで配達に出掛ける菫さんを見送った途端に、ぐうっと威勢よくお腹が鳴った。

(お腹空いた……)

きゅるきゅると鳴るお腹を宥めるように撫でる。王子さんのお呼び出しに戦々恐々としていたせいで、昨夜はすっかり食欲が失せて何も食べなかったのだ。

ふうっとため息をついた様子がよっぽど物欲しそうに見えたのか、王子さんがお弁当のあまりのおかずを皿に盛って渡してくれた。

「どうぞ」

「すみません」

少しは遠慮というものを知るべきなのだろうが、空腹には何者も勝てません。

なーんてね?

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