ランチタイムの王子様!

明るく温厚な人が多い“フィル・ルージュ”の中で、若王子さんは少々異質の存在だった。

良く言えばクール。悪く言えば無愛想。

あまり感情を表に出さない上に誰に対しても堅苦しい言葉遣いのためか、入社して1ヵ月以上経つというのにどういう人となりをしているのか、さっぱり人物像が見えてこない。

唯一知っていることといえば……王子さんが平均以上の素敵な容姿をお持ちになっているということくらいだ。

目測で175センチとお見受けするスラリ伸びたスタイルの良い細身の体躯。

神経質そうなやや吊り上がったキツネ目に上品なメタルフレームの眼鏡。

思わずシャンプーのメーカーを窺いたくなるほどサラサラの黒髪は清潔そのもの。

白いシャツと黒のテーラードジャケットが恐ろしく決まっているのは、やはりイケメンだからか。……なんか悔しい。

つまり、私生活についてはほぼ謎だらけ。退社後は真っ直ぐ帰宅するらしく、飲み会にも滅多に参加しない模様。

同僚に話しかけられているというのにニコリともしないこの男は、折角のランチタイムだというのに、今日もひとり無表情に己のデスクで手作りと思しき弁当を食していた。

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