ランチタイムの王子様!

「ご馳走様です」

お腹も一杯になって王子さんに淹れてもらったお茶を飲むと、ふうっとひと心地つく。

(あー幸せ……)

労働の後の食事は格別だった。あとは満腹になった胃袋を休めるために、昼寝でもすれば最高の休日になるだろう。

作業台の上に肘をついてぐふふっと幸せな笑みを浮かべていると、その一瞬の隙をついて王子さんは槍のように鋭い質問を投げつけてきた。

「……どうして、嘘をついたんですか?」

おうっと、投げ返すには少々辛い剛速球。

(黙っている訳にはいかないよね……)

私はだらしなく作業台に寝そべっていた身体を起こした。

満腹になってすっかり気が緩んだところを狙いすましたように尋ねられて、不満を漏らしたいのは山々だが、彼にはお母さんの味を語った偽物を糾弾する権利がある。

「“フィル・ルージュ”の人達が元カレと同じじゃないっていうのは分かっていたんですけど……」

ああ、大学生時代の嫌な記憶が蘇ってくる……。

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