ランチタイムの王子様!

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約束の土曜日。

私はそわそわと落ち着かない心を宥めながら、出掛ける支度をしていた。

お気に入りのシフォンスカートにピンク色のボウタイブラウスで爽やかさを演出してみる。会社に行くときより濃い目のアイシャドウ。髪型も気合を入れてみたりして。

鼻歌交じりにマスカラを二度塗りしようと鏡を覗き込んだ時、どうもおかしいと思い直し手をとめる。

(あれ?私、料理を習いに行くんだよね……?)

料理を習いに行くだけなのに念入りに支度するのはどう考えてもバカらしい。

自分の不可解な行為に首を傾げつつ、時計を見ると約束の10時までそれほど時間がないことが分かった。

(っと、早く行かなきゃ!!)

急いでバッグを持ってアパートを出ると、初夏の日差しの眩しさに目がくらみそうになる。

直射日光を避けるように日傘を差して駆け足気味に待ち合わせ場所のキッチンすみれまで行くと、シャッターにもたれて煙草を吸っている王子さんをすぐさま発見した。

「すいません!!お待たせしました!!」

王子さんは吸いかけの煙草を携帯灰皿に押し付けるとポケットにしまった。

「じゃあ、行きましょうか」

「へ?ここで教えてくれるんじゃないんですか?」

キッチンすみれの店頭のシャッターを指差して、キョトンと目をしばたたかせる。

待ち合わせ場所にキッチンすみれの前を指定したから、てっきりこの場で教えてもらうのだとばかり思っていた。

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