ランチタイムの王子様!

王子さんに先導され胡桃坂商店街から住宅地を抜け、街路樹が涼しい日陰を作る歩道を歩く。王子さんのマンションはキッチンすみれから歩いて10分ほどの高台にあった。

高台の上にそびえたつマンションは街の支配者と言っても過言ではない。

10階のボタンを押すと、エレベーターはゆっくりと動き出した。

エレベーターホールから一直線に延びた廊下を歩いて、突き当りのライトブルーの玄関扉の前でポケットから鍵を取り出すと、ガチャリと開いたドアを押さえた王子さんが入室を促す。

「どうぞ」

「お邪魔しまーす」

玄関マットに並べてあった焦げ茶色のスリッパを履いて、早速部屋にお邪魔する。

バスルームとトイレらしき引き戸を横目にリビングまでやってくると、大きくとられたベランダの窓からの眺望に歓喜の声を上げる。

「うわあ凄い!!」

高台に建っているだけあって、王子さんの部屋からは街が一望できた。電車のレールも、道路もまるで作り物みたいに小さい。ベランダの窓を開けると涼しい風が入ってきて、頬を撫でていく。

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