ランチタイムの王子様!
「そんなに凄いですか?」
王子さんが不思議そうに首を傾げて尋ねる。手に持ったお盆には水を入れたグラスがのっている。
他人のお宅ではしゃいでしまったことを恥じ入ると、リビングテーブルに置かれたグラスに手を伸ばす。
水にはほんのりレモンの風味がついていた。まるでオシャレなカフェにでも来たようなおもてなしである。
(広いなあ……)
手にグラスを持ちながらリビングの様子を窺う。
男性が一人で暮らすにはもったいないほど広いマンションである。
15畳はありそうなリビングダイニングには木目の美しいアンティーク調のダイニングセットとベージュのL字ソファが置いてある。
フローリングには掃除が行き届いているのか埃ひとつ存在せず、脱ぎっぱなしの部屋着といった生活感を感じさせるようなものはない。
王子さんのイメージにぴったりの素敵なお部屋である。
「キッチンも広いですねー」
「部屋はキッチンの広さで選びましたから」
対面式のシステムキッチンにはIHコンロが3口もついていた。言わずもがな最新式である。
コンロ横のスパイスラックには私の知らない調味料や香辛料が並んでいて、なにやらオシャレなボトルには日本語以外の文字が多く見受けられる。