ランチタイムの王子様!
「美味しいですか?」
目を細めて蕩けそうな笑みを浮かべる王子さんを見て、私は思わずフォークに差したハンバーグの欠片を落っことしそうになった。
(王子さんが……笑った……)
あの、王子さんが。
社長渾身のギャグにもピクリとも表情を動かさない王子さんが。
麻帆さんの脇くすぐりもあっさりシカトする王子さんが。
表情筋が衰えているのではないかともっぱらの噂の王子さんが。
笑った……?
ハンバーグより王子さんの笑顔の方が、よっぽどインパクトがある。
「お、美味しいです……」
しどろもどろになって答えると王子さんは、頬を緩めたまま満足そうに頷いた。
……それにしても、なんて優しそうに笑うのだろう。
仕事中は無愛想で眉をピクリとも動かさない凍てついた氷のような表情なのに、先ほど一瞬だけ見せてくれた笑顔は、春の日の陽だまりのような温かみさえ感じた。
笑うと少年のように無邪気になるなんて知らなかった。
本当に同一人物なのかと疑いたくなる。